後語り

ここまで読んでいただいた皆さま、ありがとうございます。「なんかナルサスに褒められたい」という理由で書き始めた師弟連載でしたが、無事結末を迎えることができました。
皆さま、ナルサスを先生と慕い、優れた頭脳を持ち、随所で俺の弟子、可愛い弟子と言われ、時々は言い争い、そして時々は優しく諭され、自分の道を切り開こうとする主人公のお話…しっかり味わっていただけたでしょうか。
こうやって書くと本当に欲望を形にした文章だなと思うんですが、いいんです。とりあえず私のナルサスに褒められたい欲求は満たされました。

ここから先は本当にどうでも良い作品へのこだわりや私なりの感想を書いていくところになるので、危険な予感のする方はお戻りくださいね。

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読み終えた皆さまの心、もしくは夢小説の主人公として見た一人の少女が、少しでも「認められた!成長した!」という気持ちになっていれば、それは本当に私にとって喜ばしいことです。
トリップ設定といいつつ2話が始まる頃にはもうほとんど何も設定が活きていないっていう、主人公の設定を考えることを避けた結果だったのですが、最初からナルサスに認められるほどの知識と思考回路を持っているヒロインをどう扱っていこうか自分自身も迷っていました。
やばい、どうあがいても俺TUEEEEにしかならない、どうしよう、と思って修正をかけることもしばしばありました。

明らかに決めていたのは「ナルサスの弟子」「エラムとは関係良好」くらいなものだったので、頭でっかちな彼女が実際に外に出てみたらどうかなと考えてみると、外は怖いところ、というのを十分に分かったうえで、それでも目の前に現れたアルスラーン殿下という人をなんとなく支えたい、そして師匠の役に立ちたい、という気持ちから色々な行動を起こしていく方が自然かなと思い、その方向で書き進めていきました。

書き連ねれば本当に気持ち悪いくらい沢山出てきそうなので、後は一話一話を振り返る形にしますね。
各話ごとに、タイトル・一言あらすじ・お気に入り表現・コメントを記載していこうと思います。
40話をひたすらに振り返るものなので、もし興味があればご覧ください。

1-10話 / 11-20話 / 21-30話 / 31-40話

001/呼応▶主人公、トリップする。

"蜂蜜のように流れる長い髪の、涼しげな紫苑色の瞳をした彼の名前は何というのだろう。"

>>ナルサスの髪の毛を見た時に「あ、蜂蜜みたい」って思った記憶。ハニーブロンドっていう響きは昔から好きですね。

002/再会▶主人公の無駄知識披露と、ダリューンが来ていきいきするナルサス。

"旧友との再会にしては複雑な表情のナルサスを見て、カナタとエラムはそれとはなくともこの後に起こりうる事態を想定し、お互いに視線を交わすのだった。"

>>出来る弟子感が出てて、主人公もエラムも二人とも可愛いなと思って書いてました。

003/王子▶食事を用意するエラムとアトロパテネの話にうずうずする主人公。

"どうやらダリューン卿はナルサスの芸術に関して歯に衣着せぬ物言いをしても激昂されぬ珍しい人物のようだ、とカナタはそのやりとりを見て驚く。 "

>>ナルサスは結構感情豊かな人なんだと思います。隠遁してる最中はそれを隠す必要もなかっただろうし、主人公は特にナルサスと口喧嘩になるので激昂してる姿は見慣れてそう。

004/捏造▶主人公の出自をさらりと知るダリューン。

"「ダリューン…おぬし、想像力に乏しいところは相変わらずだな。師弟間の敬愛が理解できぬと?」
「そうだな、いささか上玉すぎる上にお前が甘やかしているのが見て取れる」
「ほお、ああいうのが好みなのか。カナタを弟子にして以来、手塩に掛けて育ててきたのだぞ。おぬしなどにはやれぬ」 "

>>親バカの始まりですね。敬愛って言わせてますが本当にこの時は敬愛です。

005/転機▶カーラーンの部下きちゃった。

"どうやら旧知の仲であるというこの黒衣の騎士殿は、その辺りの武将と異なり知略にもある程度秀でているようだった。相手がナルサスだからより陰険なやり方を思いつくのだと言われても納得の仲でもあるが。 "

>>主人公がダリューンのこと割と観察して気に入ってる描写入れてあったなと、読み返して自分でも意外に思いました。

006/忠誠▶ナルサス、殿下にお仕えする。

"殿下の発言にナルサスはうっとりとして拍手を送っていた。 "

>>ここの転身の早さが大好きです。

007/試練▶主人公も旅についていきたくて勝手に秘密をばらす。

"①「ナルサスさまはカナタさまを一人でどこかにやるということに耐えられないだけなので、ご心配なさらず、ダリューンさま」
②「殿下、お見苦しい姿を見せてしまい、申し訳ありません。ナルサスさまは、カナタさまに関してはかなりというか、度を越して過保護なところがありまして」 "

>>この連載のエラムは、主人公が途中から転がり込んだおかげで原作よりもしっかりした子!というイメージです。エラムはエラムで二人のことすごく好いてます。二人の関係に憧れに近い感情を抱いてそう。

008/解答▶山を下りるための策を主人公考える。

"「左様です。しかし知略というものは、最も優秀で武勲に優れた者が実行しても、最も無能で無力な者が実行したとしても、結果の変わらぬものでなければならぬ…と私は考えます。そして、結果としてその両者が等しく生き残ることが、策士の在るべき理由というものです」 "

>>ここに「生き残る」っていうのが入ってくるところから、主人公のこの世界へのアンマッチさというか、勝つとか倒すじゃなくて生きるっていう言葉を使うところで不慣れさを出せるようにしました。

009/少女▶ナルサス、弟子にいたずらする。

"わざと紛らわしいような言葉を選ぶのは、弟子の困った顔が見たいという困った師匠の勝手だった。 "

>>困らせたいとか子供か!って思いつつ、ナルサスはまだ子供だと思って関わってるのでそういう表現に。しょうもない悪戯とかするに違いません。

010/痛快▶殿下たち、山を下りる。

"ヴァフリーズ老の言葉を借りれば『ナルサスは余分なことが多い』ということだが、そういうところも含めての策士である。既に行動を共にしている四人はそのことを理解していた。 "

>>いやほんと、ナルサス余分なこと言うなぁって原作初見のとき思ってました。理性的に見えて言いたいこと全く我慢しない、そこが好きなんですけど。

011/不足▶主人公、初めての力の衝突を考えてびびる。エラムが慰めてくれる。

"①そういうことか、とナルサスは小さく唸ってみせた。確かにこの世界に来たばかりのカナタのことを思い出せば、虫も殺せぬような優しい―――と言えば聞こえはいいが、意気地も覚悟もない少女だった。
②「そこまで分かっていただければ大丈夫でしょう。私からすれば、今日のあれはいつもの師弟喧嘩の延長のようなものでしたよ。違いと言えば、珍しくカナタさまが言い返さなかったことくらいです」 "

>>①は的確に書けたなという自己満足。
②エラムの慰め方も、ツンデレなところも書けたのでお気に入りです。大したことないよ、気にするなって言って、しかももう大丈夫だよって慰めてくれる。彼氏かよーヒューヒュー。

012/決戦▶カーラーン倒す。

"羨望と憧れと、それに覆い被さるようなカナタの野心の灯った瞳とその言葉に、ナルサスは背中を走る神経の束に溶かされた金属を流し込まれたような、そんな感情が燃え立つのを抑えきれなかった。 "

>>どういう表現にしようか迷ったんですが、自分の弟子が急に自分の知らないところで成長した衝撃を書きたかったので、表現がちょっと大袈裟な気もしますがいい感じだと思ってます。

013/潜入▶ヒルメスに王都で追い掛け回される。

"判断が早急であったかと一瞬の後悔が頭を過ぎったが、叫ばれる前に殺らねばならなかった。誰に言い訳するわけでもなかったが、カナタはそれでも男を斬ったことに何も思わぬわけではない。自らの手で起こしたことに責任を持てと頭の中で己を叱咤しながらも、ナイフを持つ手と唇が未だに震えている。 "

>>動揺してる主人公の頭の中をバッと書き出したらこんな感じかなと。

014/逃走▶ヒルメス逃げる。

"「勝負は後日にあずけた。今日は引き分けにしておこう」
「そうか?俺の弟子も世話になったようだし、今日できることを明日に延ばす必要はないぞ!」 "

>>俺の弟子呼び、ナルサス自身も気に入ってそう。俺の俺のって言いたがりそう。

015/稽古▶主人公、度胸をつけたがる。

"「エラム、手合わせをお願いしたいんだけど」
「今手が離せませんので、他を当たってください」
「じゃあ先生」
「カナタ…仮にも師匠に対して『じゃあ』とは何だ。そんな弟子に育てた覚えはないぞ」 "

>>じゃあwwwwwwwwwww 一応この後に謝ってますが、あんまり反省してなさそうな主人公でした。

016/警告▶ホディールの城で一悶着起きるまで。

"ナルサスがそんな気苦労を抱えていることはまだ知らぬカナタだったが、何か自分の行動を制限しようという言葉が始まりそうな空気は敏感に察したのか、その胸を押し返すように腕に力を込めた。その様子が更に気にくわないと言わんばかりに、ナルサスはより強くカナタの体を抱きしめて口を開く。 "

>>この辺りから「過保護な父親と年頃の娘」感が強くなってきますね。ナルサスは主人公を咎めようとして拘束してるだけなので、すごく身体的に接触してるはずだけど色気の欠片もない風に書いてみました。

017/別路▶ペシャワールに向かう中、分かれて進むことを選ぶ一行。主人公、アルフリードを助ける。

"①エラムがそうつぶやいたまさにその瞬間、カナタはその大軍の中で銀仮面の男の姿も見つけられぬのに、その鋭い眼光に射抜かれたようなこの世のものとは思えぬほどの悪い心地を覚えた。二人はすぐさま仲間の元に戻る。
②予備動作もないかと思われるくらいのスピードで振り下ろされたヒルメスの刃を受け止めたのは、カナタの引き抜いた長剣だった。二本の刃はお互いに同じ圧力を持って、お互いが跳ね返された後再びかち合った。火花が出そうだ、とカナタは思う。男が手加減をしているのではないというのは理解できたが、カナタはこれ以上ないくらい渾身の力をその刃に託していた。一度刃が離れて次の手が自分に向かえば、無事では済まないかもしれない。刃越しに見るゾット族の少女がすっかり呼吸を忘れて立ち尽くしているのを見て、カナタはその意識を何とか呼び戻そうと激をとばした。
③「カナタが語るに得意なのはこの世の真理のみよ。何せ、俺の弟子なのだからな」 "

>>①あ~ここの表現好きだ…って自分でも思えるところ。
②ヒルメスと主人公の力の差があるところを表現したくて悩みました。戦闘シーンは総じて難しいけど、ここは様子もよく書けてるなと自画自賛。
③弟子アゲしてると思いきや自分もついでにアゲてくナルサス。そして俺の弟子呼びほんと好きですね。(私が)

018/魔道▶地行術を使うやつに出会う。

"「一度だけ作ったな。材料が何か分からぬやたら固くてぬめり気のあるものを」 "

>>一応ここでナルサスの言っている『やたら固くてぬめり気のあるもの』は元々何を作ってたかは決めているんですが、いつか書きたいと思ってます。あと主人公は別に味オンチとかアレンジャーとかではなく、単純にこの世界の食べ物とくっそ相性が悪いという設定なので、きっと本気で勉強すればマシになるんです。でもエラムがいるのでその必要性が全くないという…不要だけど考えてる私は楽しい設定。

019/情愛▶地行術を使うやつを倒すけど、主人公が脚を負傷する。

"①左脚に痛みを感じたのは直後のことであったが、そこから百分の一秒もしないような速さで間髪を入れず、ナルサスがカナタの体に半ば体当たるような形で飛び込んできた。必死でカナタの頭をかき抱き、勢いのままに三ガズ(約三メートル)ほど離れたところに体が覆い被さるような体勢で倒れ込んだ。
②「この場合、俺の気が弱いということになるのだろうかな」
いつの間にこんなに大切なものができてしまったのかと、ナルサスはひとりごちて笑った。 "

>>①キャーナルサスサマー!!
②俺の弟子、可愛い弟子、って思ってた彼女が目の前で傷ついて、それを自分が防げなかったっていうことからちょっと弱気になるナルサス。この辺りから少し意識は変化してるんですが、ナルサスはひねくれ者なので、アルフリードにからかわれて結局その気持ちを「可愛い弟子」に戻します。

020/推量▶ナルサス&主人公VSヒルメス

"①「さっきだって何か仲睦まじ気に内緒話をしていたじゃないか。あたしの前で隠す必要なんてないのに」
「隠すも何も、そもそもおぬしに見せるような仲はござらんよ」
②「堂々と名乗ったそうではないか。おぬしも俺の可愛い弟子には甘いとみた」 "

>>①勘違いしてるアルフリードの振り回し具合がもはや可愛いなと思って書いてました。うんざりしてるナルサスもお気に入り。
②19話で気持ちにちょっと気付きそうになったけど、ここで何もなかったように「可愛い弟子」にもう戻りました。早い。

021/論破▶ナルサスの舌戦すごい。

"「殿下のご命令に、ひとつ付け加える。貴様もパルス騎士であるからには、女には手を出すな。ルシタニアの蛮人どもと手を組んだふりをするうちに、まさか国王の名誉を傷つけるような騎士になりさがってはおらぬだろう」 "

>>原作を冷静に読み返しててナルサスの肝の据わり方すごいなって思っていたシーンだったのですが、主人公が負傷しているので、それに対する焦りを悟られないようにザンデに念入りに釘刺すシーンを書きたかったんです。ちょっと言葉多めにしてるところがこだわり。

022/誤解▶殿下たちとようやく合流してペシャワールを目指す。

"「まあ、済んだことはともかくとして…」
「殿下!私は誓って何も済ませたりはしておりませぬ!」 "

>>ここのシーンめっちゃニヤニヤしながら書きました。原作と違って「済んだことはともかくとして…」の台詞をダリューンじゃなくて殿下が言ってるんですが、殿下にも必死に弁明しようとするナルサスに更にニヤニヤしてました。

023/合流▶ペシャワール到達

"「カナタが見当を外すなんて、珍しいな。俺としてはその外れた見当でこちらに合流してほしかったものだ。男三人の旅路は、俺にとっては損な役回りでしかなかった」
「そう言う割に、殿下の話では何度もギーヴが危ないところを助けたみたいじゃない」
「ほう、おぬしにしては殊勝な行いじゃな。何か悪いものでも拾い食いしたのか」
「嗚呼、ファランギース殿の虐げるようなその視線ですら、今の俺には眩しすぎる!」 "

>>ファランギースのギーヴを辛辣に言うところが好きなのですが、あまりにも野生動物扱いしてて自分でも笑えました。多分、ファランギースだったらもうちょっと雅な言い方するんでしょうが私の雅さがなかった。

024/相談▶キシュワードに売り込まれる主人公と、悩む殿下に相談される主人公

"「キシュワード殿、ご心配なく。ここに数年かけて私が蓄えてきた、もう十万ばかりの兵がおりますゆえ」
彼は決して茶化すわけでもなく、真剣な面持ちをして、指でカナタの頭をつついてみせた。 "

>>俺の弟子ドヤァ

025/急襲▶ヒルメス、ペシャワールに来る。

"そうして地面にうずくまっている殿下の頭上に刃を漂わせては、視線一つでカナタを脅してみせた。 "

>>したり顔してるんでしょうねヒルメス。ほら~動いたらアルスラーン斬っちゃうぞ~みたいな。

026/捕獲▶ラジェンドラ捕獲成功。

"①平然としてナルサスとカナタが一礼した。
②「ナルサスとカナタが決めてくれたことなら、私に異存はない。いちいち許可など求めなくてもよい」
「殿下、策を立てるのは私とカナタの役目でございますが、判断と決定は殿下のご責任。ご面倒でも、今後ともいちいち許可をいただきにまいります」 "

>>この辺りでナルサスも主人公の実力をかなり推してて、二人の軍師、っていう雰囲気が強くなってきますね。

027/宴席▶ラジェンドラと飲み会。

"「古い書物で目にしたことはありましたが、今もそのやり方は変わらないのですね。シンドゥラの民は伝統を重んじるよき民なのでしょう」
「わかってくれるか~!」 "

>>飲み会でも一回失敗してるのをちゃんと生かす主人公なんですが、「やっぱり気持ちが入らないからかどこか白々しい口調になってしまってる感」を出そうとして悩んだ記憶があります。そしてラジェンドラをちょろすぎる王子に仕立ててすみません。

028/悶着▶師弟喧嘩。

"お前は頭の出来もいいし見目も良いくせに、どうしてそういうところで可愛げがないのだ!第一、師匠に対して詫びの一言もないとはどういうことだ!」
「頭を下げるのは自分に非があるときだけだと、そう仰ったのは先生です!」 "

>>ナルサスと主人公の言い争い書くの好きです。主人公がナルサスに結構ずばずばと物を言うのはもちろん師匠譲りです。今私と話してるでしょ!みたいな台詞もあって、ほんとお前らくっつけよって思わされながら耐えました。

029/愛嬌▶シンドゥラに行く。

"①「うーん、そうですね」
「よい、カナタ。申し上げろ」
「まずは殿下、おめでとうございます」
②「では、ラジェンドラ殿の提案は、断るべきなのだな」
「いえ、私はご承諾なさってよろしいかと存じます」
「はい、ご承諾なさいませ、殿下」 "

>>①も②も師弟ならではのいちゃいちゃ繰り広げてますね。どうだ俺の弟子は!ってやっぱりドヤ顔してそうなナルサスが好きです。

030/得手▶主人公、料理スキルが壊滅的。シンドゥラをさっくり攻める。

"大きく開けた口にエラムによって無慈悲に詰め込まれたカナタ作の料理は、偶然通りかかったギーヴの口内と食道を即座に侵食した。その雄叫びに何事かとダリューンは剣の柄に手をかけたまま走り寄ったほどだ。ファランギースが汚物を見るような目でギーヴを見ていたが、実際ギーヴは汚物を吐き出す寸前でなんとかこらえているところだった。アルスラーンがギーヴの傍でどうしたらよいかとおろおろと慌てている。 "

>>皆で仲良くやってる風でお気に入りです。それにしてもファランギースのギーヴに対する表現がほんと酷い。

031/精選▶神前決闘決まった。

"「ナルサス、そうなる前にカナタをお前の弟子から解放してやらねばなるまいな」
ナルサスがそれに関して何か言おうとする前に、ダリューンは勢い良くその場で立ち上がった。 "

>>ダリューンはナルサスの意向を知っているわけではないけど、どう見ても一人前の軍師になってる主人公を認めての発言。それに対してナルサスは「まだ今は…うーん」って考えてる。

032/薫染▶神前決闘とその結末に揺らぐ主人公。

"「神前決闘を見て、どう思った。バフマン殿の最期を見て、どう思った。事実は炎のように風にゆらめき、人の思惑によって見え方は変わる。風を止ませ、炎と一対一になり、四方八方から覗いて見なさい」 "

>>ナルサスに諭されたい~~~っていう願望を込めた一言。この話ほんとはナルサスに諭される部分がなかったんですが、主人公が一人で決断するのはまだ早いかなと思い急遽修正をかけました。今では全話の中でもお気に入り。

033/未来▶主人公、進路を決める。

"優しげに細められた、アメシストのような色をした瞳に見つめられ、カナタは大きく返事をしてみせた。ナルサスは可愛い弟子の成長をそれでも心の底から喜べない自分を隠すように、彼女との間に広げられた地図に視線を落とすのだった。 "

>>お前が決めてきたことなら…でもしかし…っていうナルサスが悩んでるシーンを書くたび、ああ、大事にしてるのね。って思えます。他のこと即断するナルサスだからこその愛を感じるシーン。そしてナルサスもここでようやく手放す決意をしました。

034/事繁▶主人公、万騎長補佐になる。馬と相性が良くない。

"「俺はいつでも弟子を可愛がっているさ、ナルサス流のやり方でな。それに俺の弟子だというのなら、この好機に政事に関して何の経験も積まぬという選択肢は元よりない」 "

>>原作で出てくる「ナルサス流」というのが好きでここに入れてみました。右に行くか左に行くかではなく、右にいったらこう、左にいったらこう、って考えておくのがナルサス流ですから、主人公のことを一人立ちさせると決めたナルサスは右も左も同時に行かせてみようと考えてる。

035/親鳥▶主人公、馬を選ぶ。ナルサスは主人公に対する決意を語る。

"「殿下。この先十年、二十年…カナタを私の弟子のままにしておくことはできません。あれのやりたいことは、なるべく叶えてやりたいという親心のようなものもございます。しかし親ではなく師匠である私は、谷から突き落とした弟子の這い上がってくるのを信じて待つ、という古典的な方法を選ぶほかありません」
「ナルサスは余程カナタのことを大切にしているのだな」
「あれもエラムも私の大切な教え子にござります。今、カナタには這い上がる力がついた。私にしてやれることは、せいぜい突き落とす崖の深さを見誤らぬことだけです。数日の間一人でも兵を率いて、無事にペシャワールに戻ることでしょう」
「そうか、分かった。カナタもエラムも、ナルサスの下で学べて幸せだろうな」 "

>>この話読み返すたびに「なんで馬選んでんだ」って思います。名前まであるという始末。
ナルサスは主人公より主人公のことを分かっててほしいな、という願望から馬のエピソードやお気に入り台詞が出てきた感じです。愛情深い。

036/捷利▶主人公、初めて一人で兵を率いる。チュルク軍と遭遇して勝利。

"なるべく特徴的な人物を選んだ、と話すカナタに、普通ならより多くの兵を引き連れて安全策を取れと言うキシュワードも、その時は目の前の彼女が言うことに豪快に笑い出すほどに信頼を寄せていた。 "

>>キシュワードにとってのナルサスとダリューンは頼れる後輩たちなんでしょうけど、主人公もペシャワールにいる間はキシュワードの後をひょこひょこ追いかけては捕まえて質問したり稽古つけてもらったりしてるはずなので、もうこの辺ではすっかり信頼を得てると思う。キシュワード大好きです。

037/帰還▶主人公、無事に城に戻る。祝宴を味わう。

"カナタはなんといっても今夜の主役だ。宴が始まるや否やひっきりなしに彼女の元には兵士たちが訪れ、共に出兵した兵たちは喜びの声を伝えたし、城にいた兵たちはどんな策を用いたのかを直接聞きたがったりした。また、次に出兵するときには是非とも自分を!とカナタに売り込む者もいた。 "

>>宴の賑やかさが書けてるなと思います。愛され主人公になりすぎないように注意はしているのですが、主人公が何かしたことに対しては優しい世界でいいかなぁというスタンス。

038/浴場▶師弟、風呂でばったり会う。

"「なっ、なな、なんでと言われても!先生!見ないでくださいそして隠してください!」 "

>>この回ほんとに書くのも楽しいし読み返しても古き良きラブコメって感じでお気に入りです。ということでどこの表現もお気に入りなんですが、初心なふりして結構的確に指示を出す主人公がよく書けてるこの台詞を。ナルサスは股間はちゃんと隠してましたが、主人公には全体的に刺激強かったんでしょうね。

039/変革▶風呂からの関係性の変化、そしてアルスラーンへの大事な話

"「では誰が中書令にふさわしいのだろう。先にカナタの意見を聞こうかな」
「殿下、私に師の前で何を言わせるおつもりですか」
「不肖の弟子よ、王太子殿下のお許しを得てのことであるぞ。言わねばそれが失礼に当たるというものだ」 "

>>イチャイチャァ…そりゃ殿下にも「何かあった?」って聞かれるわ。

040/恵愛▶ナルサスから弟子への最後の言葉と、今後の主人公の身の振り方

"エラムもすっかり赤くなった目からはらはらと涙を流し、カナタときつく抱き合って「おめでとうございます、カナタさま」と震える声で素直に祝いの言葉を伝えた。 "

>>ナルサスからの言葉はどれにも愛情を込めて書いたのでそこに甲乙つけられないんですが、姉弟子が免許皆伝して泣いちゃうエラムが可愛いと思うんですよ…。この前の涙をこっそり拭ってるシーンもお気に入りです。

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以上で後語りは終わりです。ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
2017.8.29 宇花