ボーナス・ステージ
『トラストミー・ノットラブ』の中で書ききれなかった、ゆるいやり取り集です。
通常よりナルサスの情けなさ成分多めです(当サイト比) よろしければご覧ください。
おまけ①
「よくやったぞカナタ。さすがは俺の可愛い”部下”だな」
カナタの武勲を誉めるナルサスは、ようやくそこにはまる言葉を見つけた、と彼自身も誇らしげである。
「可愛い部下とは…?ナルサスさま、私以外の部下にも可愛いと言いますか?」
「まさか。言うわけがなかろう」
「では私にも止してください。軍全体の士気に関わりますので」
冷静に言い放ったカナタの様子をキシュワードとダリューンが見逃すはずもなく、聡い軍師はまた一つからかわれる材料を作ってしまっただけだと気付く。
(キシュワードとダリューンがすっかり悪い友(笑)に。勿論ギーヴがいたら三人でからかいます)
おまけ②
「ナルサス先生が…」
「ああ、そういうことか。ナルサス先生らしい」
たまたまカナタの部下の隊の近くを通り過ぎたナルサスは、己の名を呼ぶ兵たちを見かけて顔をしかめる。
「おい、カナタ」
「何でしょうナルサスさま」
「お前の兵たちが俺のことを影で先生と呼んでいるようだが、あれは何だ」
「申し訳ありません。私が気を抜くと彼らの前で『先生』と口にしているようで。後で処罰しておきますので、何卒ご容赦ください」
「いや………………そうか」
お前が『先生』と口に出さぬようにすればいい、と言い掛けるも、口許がにやけて言えないナルサスであった。
(目の前じゃなくても、カナタに先生って呼ばれるのを本当に気に入っているナルサス)
おまけ③
「エラム、シチューおいしかった。ありがとう」
「お礼ならナルサスさまに申し上げてください。少しは元気になったようですね」
「心配かけてごめんね」
「私に謝る必要はありません。……料理くらい、いつでも作って差し上げます」
だからあんな風に一人で悩むのはお止めください、とエラムは早口で言い放った。
「ナルサス……お前、顔が気持ち悪いぞ」
「なんだとダリューン!あのやり取りが美しいなどというのは、お前には一生理解できぬ感情であろうな。やれやれ全く惨めな男だ」
「(どっちが、と言ったら激昂するだろうなこいつ)」
(弟子と元弟子が仲良くしてるのが嬉しいナルサスと、理不尽に惨めと言われるダリューン)
おまけ④
「先生?」
「どうしたのだ、カナタ」
「ナルサス先生……」
「な、何だ。明日の隊列を変えてほしいのか」
「いいえ、先生」
「装備のことか?確かにお前には敵将を討ち取ってもらわねばならんからな…新しい剣を支給させよう」
「先生、違うんです…」
「ちょっと待て!待てカナタ。今日のお前の隊の働きぶりは殿下にも俺から言う!それでいいだろう」
ナルサスに詰め寄るような姿勢を取っていたカナタはそこで振り向いた。背後にはガッツポーズをしたキシュワードが立っている。
「キシュワードさまの言った通りでした」
「うむ。名前を呼ぶだけで欲しいものをもらえただろう。男とはそういうものだ!」
「今日から『先生』は禁止する!!殿下ー!この命令書にサインを!!」
ナルサスが書いたしょうもない内容の命令書にサインする殿下の姿があったとかなかったとか。
(既婚者の悪知恵レッスン。殿下は巻き込み事故)
おまけ⑤
「な、ナルサスさま」
「どうしたのだ、カナタ」
「ナルサスさま」
「呼び方を変えたからといって俺に二度目は通用せぬぞ」
「違うのです。その…実はナルサスさま、とお呼びするのにまだ慣れておらず、名前を口に出すのが些かこそばゆいというか…それで少し、練習をと」
頬を赤くして照れるカナタ。ナルサスは思わぬ恥じらいを見せる姿に堪らず口許を手で押さえる。
彼女がいなくなった後もどうにも笑みが止まらない。
そんな出来事を既に遠く過ぎ、ギーヴがアルスラーンの元へ駆け付けた後の話。
「おい、ナルサス。……いや、『ナルサスさま』か?」
「ダリューンお前、何をふざけている」
「軍師殿、ああいや、ナルサスさま~」
完全に自分をからかおうという空気を纏ったギーヴの口調に、ナルサスはぎょっとした。
呼び名のことで一悶着あったことは、彼は不在にしていて知らぬはずである。
「おいダリューン!よりにもよってギーヴに話したな?!」
「不在の間の出来事を共有したまでだ」
「ナルサス卿。カナタとようやく何かあったようではないか、詳しく聞かせてくれ」
「何もない!!何も!!!」
(キシュワードがいなくなったと思えばギーヴが戻ってくるので結局からかわれ続ける)
おまけEnd.